クルーズ客船の操舵室(ブリッジツアー)に行ったら見たこともない光景が!

操舵室見学でお話しして貰った内容をピックアップしました。

船での重要な通信手段はなんでしょう?

操舵室

手旗信号やFAXでもありません。

答えは『声』です。

電話、トランシーバー、VHF、衛星電話等は、全て声で通信しています。
現在航海している船には、モールス信号、手旗信号、通信士もいません。通信士という職業はいません。最近では通信室もなくなっています。

S0Sなどの信号は人口衛星を経由して世界中に送信されるシステムを使っています。
紙の海図は使っていません。舵も誰かが取るわけではなく自動航行装置でやっています。ブリッジにいる当直間の役割は、目での確認が役割です。
本船の船体は37年経っているが、ブリッジにある機械は最新設備になっています。
機器類が一つでも壊れてしまうと、国際ルール上、出港できなくなってしまいます。

すべての船で大事なのは人命救助

操舵室見学
船は海上における人命救助が一番尊重されています。機械の検査が何度も行われます。また、一週間に一度の避難訓練、港では停泊中に救命艇の降下訓練などが行われます。
世界中に船の検査官がいるため、抜き打ち検査の可能性もあります。その場で検査官に避難訓練を指示されたり、○番艇を降ろすように命ぜられることがあります。そういう検査をクリアできないと船は、港を出港できなくなってしまいます。

客船を含む船の検査の厳しい国3選

プロムナードデッキ

船の検査に厳しいといわれる3つの国を紹介します。1つは日本にあるNKという名称の『日本海事協会』です。2つ目は本船が加入している『ジャーマンロイズ』。3つ目は、アメリカの『ABS』。この3つの検査機構が、とても厳密に船を検査しています。船の安全維持は必須です。その検査のおかげで、安全に航海ができるのです。

ブリッジ横、サテライト・イパーブ

サテライトイパーブ
ブリッジの外にある卵型のものが設置されています。緊急時に海水に浸かると即座に信号を発信します。『船の位置』・『船名』・『船籍』・『船種』などが数秒後に人工衛星を経由して、陸に発信される仕組みです。その信号を付近の船舶に知らされることにより、救助へと向かうことになります。
ラジオビーコンとなっていて瞬時に発信されています。
2年に一度電池を交換します。過去の歴史で、免許を持たない人が交換したことがありました。勝手に遭難信号が発信されてしまったため、混乱を招いてしまったことがあります。それからは取替えの免許取得者が電池交換することとされました。

離着岸の操船時

 

操舵室ここからギャングウェイや舷門など見て、船を付けています。
非常にゆっくりとしたスピードで船を付けていきます。どーんと着けてしまうと船も岸壁にも傷がついてしまいます。離着岸の操船時は落ち着いて、丁寧にしていくのです。

人工衛星で船の航行エリアがわかる

船のレーダー
最近の船には、通信士が乗っていないため、人工衛星から世界中の情報を入れています。例えば、私たちが海賊エリアを航行中の時は海賊に関する情報が送られてきます。

船の設備である電子海図・自動航行装置

電子海図

全て電子海図です。自動航行装置 オートパイロットが発達したため、昔みたいに舵を取らなくなりました。
今日の昼から明日の昼、明後日の昼までずっと同じコースをたどることがあります。それをずっと人間が維持するのは大変困難です。コンピューター・機械を使うほうが、正確です。現在は277度でポルトガルのポンタデルガータに向かっています。
自動だが手動に切り替える時もあります。港の出入港、スエズ運河パナマ運河航行時、緊急を要する時は手動になります。

海図として、米国ニューヨーク近郊の地図が必要となれば、電子海図をすぐに表示させることができます。世界中の海域の地図を表示させられます。日本の東京湾の電子海図も、すぐに手に入れられます。

船の速度・船籍表示がされるモニター

船の速度計

(モニター上の説明)これが現在の本当の速度。自動車が道路の上を走るのと同じです。これはknotだからだいたい29km/hくらい。2倍してちょっと引く。水深もわかるようになっています。

他船の船名や船籍・目的地・種類もわかります。レーダーに名前も出てこない船は、不審船だとすぐわかるようになっています。本船も信号を出しているからPASSENGERポンタデルガータと他船からもわかる。

Q小さな漂流物などでもわかるのか?
Aわかります。レーダーと目視で確認しています。
航海当直は一等、二等、三等航海士がしています。船長はほとんど操舵室に出てこないです。船長はほとんど陸、会社とのやりとり、入港、出港時に仕事をします。

舵をきる操舵室のクルースタッフのシフト

 

操舵室一等航海士は16時~20時、三等航海士は20時~24時、二等航海士は16時~20時。一人の航海士と一人の操舵手で二人三脚で4時間ずつ、1日8時間勤務しています。

アルパレーダーでクルーズの航行が安全に!

アルパレーダー
これが船の目になります。衝突予防装置方式がはいっているレーダーです。
これは何時何分にあの船が我々のところに向かって来てくるのか、わかるようになっています。
霧の中でも氷山を確認することができます。

国際信号旗は覚えるとおもしろい!!

国際手旗信号機

A-Zまでのアルファベットを使用します。世界の船、飛行機の公用語は英語です。
冒頭でも伝えたように、一番ベストな通信手段は声です。病人がでても衛星電話を使って伝えます。電話連絡するときにアルファベットで話します。そのときに間違わないように(昔の日本の電報電話でも「いろはの『い』」、「あさひの『あ』」)はっきり伝えます。英語でも同じです。アルファの『A』、ブラボーの『B』、チャーリー『C』というように伝えます。非常にわかりやすい単語を使っています。『R』はロメオ、『J』はジュリエット、『W』はウィスキーを使います。

トランシーバーで「weather」と言いたい時はウィスキー『W』、エコー『E』、アルファ『A』、タンゴ『T』、ホテル『H』、エコー『E』、ロメオ『R』と言えば相手に理解してもらえます。二つ重なる時などはタンゴ、タンゴと伝えると『TT』と理解してもらえます。

国際手旗信号機

信号旗自体にも意味があります。例えばブラボー『B』の旗を揚げている船は、「私たちは危険物を扱っています」という表示です。ブラボー『B』の旗は、燃料補給になるバンカー時に、外でタバコを吸わないでくださいという放送と同時に、船の一番上に揚げます。これで港から本船の状況がわかる。

海上気象情報で客船の航路を決める

海上気象情報

海上気象情報は誰でも簡単に入手できる情報です。世界中の天気が一週間分三時間ごとに入手でき非常に正確です。台風シーズンになると気象海上情報をよく見ます。

Q&Aタイム

Q台風などの悪天候の場合はどう動く?
A台風ハリケーンは洗濯機と同じで一度入ってしまうとでられなくなります。低気圧程度であれば航行します。

Qどれぐらいの波の高さを経験したことありますか?船酔いは?
航海士時代はうねりが10mくらい経験したことがあります。船で仕事をするひとが船酔いしたときは、酔い止め薬を一つ飲むよりも、薬を3つに割って朝昼晩に分けて飲むのがオススメです。一つ飲むと眠たくなってしまうからです(笑)。船酔いしているときは、小さい文字は見ないようにしましょう。できるだけ景色を見ながら、誰かと雑談するのがオススメです。

Q人間が捉えられない漂流物はレーダーがアラームを出したりするのか?
Aアラームは出しません。大きな漂流物は情報が流れてきます。我々の位置からの距離を把握して確認することができます。

Q小さい漂流物(木など)はどうするのか
A当たっても問題ない。

Q片側だけのエンジンで航行することはありますか?
A時間調整で1機だけで航行することはあります。少し迂回して時間調整するときもあります。
港に早く入ることはできません。入港の日にち・時間は決まっています。「港の近くで待てばいいのでは?」と思うかもしれませんができません。船の交通量が多いので港湾局から他の船の交通の妨げにならないように指示があります。

まとめ

普通に生活していたら知らない内容ばかりでした。操舵室見学(ブリッジツアー)の機会があればオススメです。手旗信号おもしろい!